十二六は、ちょっとやっかいな酒だ。日本酒用に揃えた酒器が使えない。
瓶をそのまま食卓に置くのも味気ないので手持ちの徳利に入れてみる。こんなこともあろうかと思って買っておいた透明なガラス製の徳利。十二六を注ぐとなかなか良い。泡が上ってくるのも見える。ところがちょっとつまみを用意している間に、室温で暖められてガスが発生し、徳利の口から溢れてしまった。
仕方がないので、食器戸棚をあさる。ドレッシング用に買った口のついた小さなボウルがあった。日本風に言えば片口だ。片口に移した十二六の表面には炭酸ガスの泡がふつふつと見え、注ぐときにはとろりとした米の粒感を楽しむことができそうだ。なかなか良いものが見つかった。
杯も面倒だ。日本酒はなるべく小さな杯でちびりちびりとゆっくり呑むのが良い。ところが十二六はそれでは旨くない。じれったい。思い切って、昔風の湯飲み茶碗にどばっと注ぎ一気にあおってみる。これでは時代劇の浪人のようだ。
またまた食器戸棚をあさると蕎麦猪口があった。内側が黒くて蕎麦つゆが入っているかがわからないのが嫌で使わなくなったものだ。これに十二六を注ぐと黒と白のコントラストが鮮やかでなかなかに楽しい。
あっという間に十二六が無くなってしまった。次回の発売日までに十二六用の酒器を用意しておこう。塗りの片口を一つ買ってみたくなった。杯は江戸切り子のビールグラスを使ってみようか。